気軽な相談から大きな課題解決へ。クリエイティブデザイナーとして視野を広げることを大切にしている理由。
プラスディーでは、“人や企業の営みのすべてが、デザインの対象であり得る”という考えから、2021年9月より、社員全員が「X Designer」として自身の肩書を定義した。対象には、ディレクターやエンジニアなどのクリエイティブ職はもちろん、広報や経理などのバックオフィス職も含まれる。全員がデザイナーを名乗ることで、社内外にどんな変化が生まれるのか当事者である社員へのインタビューから明らかにしていく。
今回インタビューするのは、「Creative Designer」の今村光一郎。Webサイトのディレクションやコンテンツの企画、ときにはスチル撮影もこなすマルチな彼は、なぜ「Creative Designer」を名乗るのか?
- 今村 光一郎:ディレクター/プランナー「Creative Designer」
アクセンチュアグループのIMJに新卒で入社。ディレクターとしてキャリアをスタートした後、デザイナー職に従事。キャンペーンサイトディレクションの他、SNS投稿画像や動画の制作を行う。よりクライアントと近い距離で企画コンセプトから制作まで一気通貫して関わる経験をしたいと思いプラスディーにジョイン。現在は、デジタル領域を中心とした企画制作業務に携わる。
ig:https://www.instagram.com/koichiro_____021/
toB、toCサイトのつくり分けは、ユーザーの知識レベルや興味が湧くフックをどこにつくるかを意識する
――プラスディーで担当した仕事で記憶に残っているプロジェクトは?
2つあって、1つ目はレシート買取アプリ『ONE(ワン)』のtoB、toC向けWebサイトのディレクションです。テレビCMが放映されることが決まっていて、それに合わせて公開するにふさわしいWebサイトとはどんなものなのかを考えました。
toCサイトでは、とにかく分かりやすさを重視しました。CMを見て来る人はスマホやアプリの操作に慣れている人ばかりではありません。若者から主婦層まで幅広く「レシートをお金に変える」という体験をしてもらうためにも、どんな人でも直感的にサービスを理解し、すぐにダウンロードして使ってもらえることが必須の要件でした。そのため、文字要素は少なめにビジュアルなどの視覚要素を多くし、スクロール連動で使い方のフローを簡潔に理解してもらいやすいよう設計しました。
toB向けサイトでは、ビジネスユーザー(ONEをマーケティングに活用したい人)に向けてリサーチ会社から購入するデータとは違い、レシートから生の購買データを収集することで得られるONEならではのデータの有用性を理解していただく必要がありました。忙しい方がサービス概要を直感的に理解するにはシンプルである必要がありますが、「うちの会社でも使えるかも?」と興味を持ってもらうためにサイトで伝えるべき情報量とビジュアル面で見やすさとのバランスを探ることに苦労しました。
クライアントメンバーにUI/UXディレクターがいらっしゃって、その方と常に議論しながら一緒にXDで作り込む作業をしたのが思い出深いですね。当然その方のほうがプロダクトに関する理解は高いのですが、こちらからも初見ユーザーの感覚やUIの引き出しの面でサイトの使い勝手はもちろん、メインコピーの分かりやすさなど実際ONEを使うユーザーの視点とディレクターの視点を行き来しながらいろいろと提案させていただきました。得意な部分を出し合ってつくり上げていくのが楽しかったですね。
課題を上げるとすると、プロジェクトメンバーの稼働が集中しすぎてしまったこと。クオリティは担保しつつ、稼働量もコントロールする。そんなプロデューサー的な視点を早く身に着けなければと思ったきっかけにもなりました。
何を目的に、何を企画し、どこに出すか。強度のある企画コンセプトと広げ方を考える
――もう1つのプロジェクトは?
マウスコンピューターさんのクリエイター向けPCブランド『DAIV(ダイブ)』のプロモーションコンテンツ「CREATOR’S VOICE」の企画制作です。このコンテンツを考える上で重要な要素は2つあると思っています。製品自体の機能性を引き出すことと、その企画が実現することでSNS拡散やメディアに取り上げてもらうなどの広がりが生まれることです。
そこで僕から提案したのが、第一線で活躍する写真家にDAIVをお貸し出しし、作品を創っていただく様子を密着取材することでクリエイターPC DAIVの機能的価値と情緒的価値を訴求する企画です。プロ・アマの写真家界隈にDAIVを1つの選択肢として考えてもらうことを狙いました。1億画素以上の写真・映像データを扱うプロの写真家に使用していただくことで、非常に高い処理能力を持つDAIVの真価を伝えることができると考えたんです。そのため、写真や映像など高画素なデータを扱いながら、メディア出演の実績がある方を基準に写真家を探しました。そんな中で、写真での受賞歴やカメラメーカーのイベント登壇実績が多数あり、業界内での認知度も高い公文健太郎さんにご協力を打診し、引き受けていただきました。
コンテンツを格納するWebサイトのデザインも、購買ターゲットである「ハイアマチュア・セミプロカメラマン」に響くよう、本物志向をキーワードに細部までこだわりました。写真をメインデザインとして大きく使うのはもちろん、表示位置を固定した仕様にすることで文字の視認性とビジュアルとの没入感を両立したサイトにしています。
マウスコンピューターさんが毎年、カメラと写真のワールドプレミアショー「CP+」で展示を行っているので、制作したドキュメンタリー動画とインタビュー記事を「CP+2021」で展示することまでを含めて1つの企画としました。「CP+」は本気度の高いカメラファンからの注目度が高いイベントです。また、公文さんが「CP+2019」に引き続き「CP+2021」でもセミナー講演を受け持つとのことで、良い拡散施策になると考えたのですが、残念ながらオンライン開催になってしまったことで、効果が小さくなってしまいました。
今後は、コロナ禍といった想定外の変化が起こった際、当初決まっていた施策に固執することなくすぐに対応策を考え、提案し、結果に繋げる動きができるようにしたいです。
今村光一郎はなぜ、「Creative Designer」なのか
――Creative Designerと自分を定義したのはなぜ?
コンセプト開発から表現領域まで一貫して担える人になりたいからです。
プラスディーで関わってきた仕事は、ただサイトを作るだけではなく解決すべき課題に沿った企画や世界観など、コンセプトから考えることが多かったので。コンセプトからユーザーの目に触れる部分まで一貫して担っていきたいと考えています。
今後は、Creative Designerとして、世界のさまざまな事象をインプットして課題意識の範囲を広げていきたいです。どんな業界の仕事もやっていきたいですが、自分ごととして考えられるテーマは、アウトプットのクオリティに現れてくると思うので。
不安をモチベーションに、できることを広げようとした新卒時代
――いわゆる「Webディレクター」の職域から外れた仕事もしているが、何かきっかけがあった?
今はディレクター業をメインにしていますが、実は前職時代、ディレクターからデザイナーに転身した経験があるんです。新卒で入社したのは大きめの制作会社で、ディレクターという肩書きをいただいたんですが、任される仕事は膨大なページのサイトの誤字脱字チェックやデバック作業で。ナショナルクライアントの大規模サイトをつくる会社だったので、そういう仕事があるのは当たり前だし、新人の僕がそれを担当することにも納得してはいたので、しっかり仕事して信用を得たら任されるようになると考えていました。
ただ運が悪いことに、僕が入社した年に会社がコンサルティング会社に買収されてしまって。やりたかった上流工程は、親会社のコンサルタントか、買収前からその業務を担当していた一部のエース社員だけが携われる領域になってしまったことで、若手がステップアップすることが難しくなっちゃったんです。
このままではいけないと思いつつ辞めるのも怖いので、まずは社内で実力を証明しやすいデザイナーに転身することで振ってもらえる仕事を増やそうと動き出しました。前向きにスキルアップを目指したわけじゃなく、不安と焦りからですね(笑)。独学である程度、Adobe IllustratorやPhotoshopを学んでから、会社にも正式に希望を伝えて、デザイナーへとシフトしていきました。デザイナーにはなれたものの美大やデザインの専門学校を出ていない自分に回ってくるのは結局バナー制作や既存サイトの調整がほとんどで、自分で何かを考えてデザインするレイヤーには辿りつけませんでした。
ただ、自分でスキルを身に着けていけるんだという自信が、自分は道を切り開いていけるとなった時に本当に何をやりたいのか考えるきっかけとなって、転職の後押しになったとは思っています。デザインを始めたのと同じような理由でカメラも撮り始めて、そっちはギャラをいただいて撮影するようになっていましたし。コロナ禍でリモートワークになって時間ができたとき、自身のやりたいことに立ち返ったら、やっぱり企画だよなって。
紆余曲折があったからこそ、ここなら自分とあった人たちと働けると思った
――今のモチベーションは何?
気のあう仲間と一緒に自分がかねてよりやりたかった企画制作の仕事に携われていることですね。さらに欲を言えば、今後SNSでバズらせたいとか、商品の特徴を端的に説明するLPをつくりたいとか、具体的なタスクになった依頼じゃなく、「こういうことで悩んでいるんだけど、どうしたらいいか」などの相談から入れる仕事が増えればいいなと思います。例えば、「うちの町、なんか若者の活気がないんだよね」みたいな、ふわっとした相談をいただいて、クリエイティブの力で解決するためのあらゆる手段を考えるような。
帯広や丸の内で場作りやコミュニケーション設計を行っている「BAUM LTD.」さんの仕事はやりたいことにすごく近いかな。元ワントゥーテンの松倉早星さんが立ち上げた「Nue inc」さんは課題解決の方法として元々プロモーションを一切やっておらず、リサーチプランニングやデザインコンサルティングから入っているのにも共感するし。「ことばとデザイン」さんも、地域密着型のクリニックをCI(コーポレートアイデンティティ)やVI(ビジュアル・アイデンティティ)から考えて作っているのも面白い。こういう、たぶんオリエンすらなくて、相談ベースで仕事が来るポジションを今後目指していきたいと思いますね。地域に根ざした問題やシェアハウスなどのコミュニティづくりなど、自ら考え、生み出したものによって人の生活や感性を豊かにする変化を起こす仕事をやれるように頑張りたいと思っています。
今はWeb関連のディレクションを担当することが多いですが、Webはあくまで一つの手段なので、そこに限定せずにいろいろ挑戦したいですね。自分に経験がない領域も、社内外のできる人に助けてもらえばいいわけですし。
プラスディーは、手段を選ばない柔軟性や、人の力を借りる懐の深さが要だと思っています。そこが自分にとっては大きな魅力です。最初に知ったのはWantedlyだったんですが、そこに載っていた『3分でPLUS-Dをわかった気持ちになれる話』を読んで、ユーモアのある会社だなと思って。シャンディガフを飲んでそうっていう、事業と全く関係ないまとめ方をしていることや、会社を擬人化していること自体がちょっと変ですよね。平和主義者タイプが多いというところも自身の特性に合っていると思っています。
写真(KV,最終カット):西田優太