PLUS-D

Career

柔らかく温かみのある対話を心がけるのは、相手に共感したいから。デザイナーに必要なコミュニケーションとは。

2022.3.25

プラスディーでは、“人や企業の営みのすべてが、デザインの対象であり得る”という考えから、2021年9月より、社員全員が「X Designer」として自身の肩書を定義した。対象には、ディレクターやエンジニアなどのクリエイティブ職はもちろん、広報や経理などのバックオフィス職も含まれる。全員がデザイナーを名乗ることで、社内外にどんな変化が生まれるのか当事者である社員へのインタビューから明らかにしていく。

今回インタビューするのは、デザイナーの小野実奈子。ただ綺麗なデザインをつくるだけではなく、相手にどう伝えるかまで責任を担いたいと話す彼女に「Communication Designer」を名乗る理由を聞いた。

profile
小野 実奈子:デザイナー「Communication Designer」

Webデザインの楽しさと教育の面白さに惹かれ、1年生の冬に大学を自主退学。その後、大学在籍中からインターンとして参加していた教育系ベンチャーのスタートアップに携わり、デザインや広報、企画など幅広く経験。運営していた予備校のHP更新やチラシ制作をする中で、よりデザインやWebに関する知識と技術を高めたいと感じる。当時プラスディーが行っていた「弟子採用」に好奇心から応募したところ、話を聞きに行くだけのつもりが入社を即決。2018年プラスディーに入社。

ディレクターを経験し視野が広がったプロジェクト

――プラスディーで担当した仕事で記憶に残っているプロジェクトは?

子ども用自転車「へんしんバイク」ブランドを展開するビタミンiファクトリー様のリブランディングプロジェクトです。コーポレートサイトのリニューアル、キービジュアルや映像のクリエイティブをプラスディーで担当しました。
私はこれまでプロジェクトにデザイナーとして携わっていましたが、初めてディレクターとして参加させていただいたのが本プロジェクトでした。

それまで携わってきたプロジェクトはコンセプトが比較的定まった状態で依頼をいただくことが多かったのですが、本プロジェクトはコンセプトから考える機会をいただきました。
提案したコンセプトは具体的には、「絵本の世界に入り込む」。経営理念やクライアントの性格なども踏まえて、ただ製品のスペックを伝えるだけではなく、ブランドサイトとして情緒的な価値を伝えることが狙いでした。「へんしんバイク」を通して得られる体験価値や、子どもとその家族のストーリーに共感してもらえる温かいサイトを目指しました。
撮影やモデルの選定も、コンセプトに合わせて、絵本の世界をイメージした背景をつくり、そのなかを「へんしんバイク」にまたがった子どもたちが笑顔で走り回るメインビジュアルをつくりました。また、実際に自転車に乗れるようになるまでの話や家族目線で綴られた記事を、「家族のストーリー」として掲載しました。他サイトが単にブログと名付けそうな部分にもこだわった結果です。細かいコピーやデザインでも、Theコーポレートサイトではなく作り手やユーザーの温度感が伝わるよう、ひとつひとつの確認作業やチームでの認識のすり合わせは徹底して行いました。どこまでが当たり前なのか、一般的って何なのか。新たな挑戦だったからこそ、基本的なところから学ばせていただきました。

コーポレート・アイデンティティのリシェイプを含んだリニューアルプロジェクトだったので、クライアントの理念や事業姿勢を統一されたビジュアルやメッセージに落とし込む必要があり、関わる人との対話は欠かせませんでした。

チーム内で誰がデザインの統括をするのか、どこまでの意見を誰が言うのかなど、ディレクターの自分がとりまとめないといけない場面で曖昧な指示を出してしまったことがありました。しかし、デザイナーを経験していたからこそ、見えるものもありました。何のためにこれをデザイナーにお願いしているのか、ここはクリエイティブディレクターに確認する必要があるのかなど、それぞれの役割を明確にするため、率先して体制を整えていくようにしていきました。そしてその難しさを身をもって感じ、改めてコミュニケーションの重要さを考えさせられました。

「ただ作りたい」という衝動で作っていた

――前職ではどんなことをしていましたか?

前職では教育系ベンチャー企業で、塾の運営と集客を行なっていました。高校の前でチラシを配ったり、広告を運用したり、合格実績のインタビュー記事を書いたり。当時はデザイン業務の比率はそんなに多くなくて、必要なことは何でもやりました。
その会社は、高校の時に通っていた塾の先生が起業してつくった会社だったんです。チラシ制作の依頼を受けたのがきっかけで関わりはじめ、それ以外のこともいろいろ手伝ううちに、大学の講義を受けるよりも仕事をしている方が楽しいと感じるようになりました。それで、1年生の冬に大学を辞めて、その企業で働くことを選んだんです。私はその瞬間に好きなものにフルコミットしたいタイプなんですが、当時からそういう傾向が強くあったんだと思います。

――プラスディーにはどのような経緯で入社を?

当時、Twitterでプラスディーのデザイナーが弟子を募集している記事を見つけて。「(師匠がつくる)グランドデザインを元に、下層ページやスマホ版の制作を通して指導を受けたい弟子を募集します」とのことで、話を聞きに行ったら、その時の上司や会社の雰囲気が魅力的で応募を即決しました。

その師匠は、元々Twitterで知っている人だったので、つくるデザインが素敵なことはもちろん、思いやりのある人柄にも魅力を感じていたので、直属の部下になれることにも魅力を感じて。今は転職されてしまったのですが、師弟だった期間にいろんな影響を受けました。この業界って良くも悪くも理論で詰められることが多い世界だと思うんですが、師匠は相手に寄り添って教える姿勢を大切にされている方でした。

――デザインに興味を持ったきっかけは?

高校の修学旅行で伝統工芸の家具をみたことがきっかけで、インテリアデザインに興味を持ちました。「ガイアの夜明け」などのドキュメンタリー番組を見るのも好きで、そういったところからものづくりへの現場への憧れが膨らんでいきました。

――デザインの魅力って?

私の中で二つあります。
一つは、世の中のあらゆるものに意味や理由をつけたり魅力を持たせたりできること。デザインって正直誰でもつくれるものだと思うんです。それがデザインと呼ばれるものではなくても、例えばそこにモノを置けばデザインになるし。ただ、プロとして仕事をするときには、どこに置くかの意図が必要で、それがデザインの面白さだと思っています。この楽しさを味わう機会は、仕事だけじゃなく私生活のなかにもたくさんあります。私は普段から料理をするのですが、お皿に盛りつける時、器と食材の色味の組み合わせなんかもデザインですよね。暮らしや体験を豊かにできる、汎用性の高さが魅力です。
もう一つは個人的な感覚ですが、手で何かをつくっていると心が穏やかになるんです。つくるものにもよるところはあるんですが、黙々とデザインしているとあっという間に時間が過ぎて、それが心地良いんです。マフラーを編んだり、クリスマスにはリースを作ったり、ものをつくること自体、幼少期から好きでした。本当に理屈抜きで、感覚的に楽しいと思えるので、私はデザインやものづくりが好きなんだなとよく思います(笑)。

相手の心を動かすため、コミュニケーションをデザインする

――自身を「Communication Designer」と定義した背景を教えてください。

デザイナーとして働くうえで、対話することや、伝え方を考えること、つまり「コミュニケーション」を大事にするという意志を込めました。以前は「ただ作りたい」という衝動だけでデザインしていたんですが、良い仕事をするにはそれだけでは足りないことを学んだんです。
良いデザインをつくるにしろ、プロジェクトをスムーズに進行するにしろ、クライアントやプロジェクトメンバーと対話を重ねることが不可欠です。ここでいう対話は、自分の意志を伝えたり、相手の声を聞くことはもちろん、互いの気持ちや立場を想像することも含めています。

そうする理由は、相手に共感したいから。過去の仕事を振り返ってみると、クライアントの考えに共感できたときほど、いいアウトプットができました。共感しているからこそ、ブランドや商品に対する認識の食い違いを少しでも減らしたいという想いが芽生え、積極的に対話しようとする。こちらが前のめりになるとクライアントも喜んでくれて、その姿を見てもっと理解したいと思う。対話することで、良いサイクルが回るという実感があって、それが原動力になっています。

そんな実体験から、「Communication Designer」という言葉を選びました。一見当たり前のようですが、徹底できている人は少ないと思います。
クライアントとのミーティングでは、現状・課題・施策を丁寧に整理して、相手に納得していただきながら話を進められる。社内の新卒や若手のメンバーからは、
伝え方やメール文などで相談を受けられる。そんな人で在りたいと思っています。

何色にも染まることのできる柔軟性を持つ、透明な自分

――仕事に関するフィードバックで印象的な言葉は?

改善したいからこそネガティブなワードを覚えがちなんですが、「セオリー通りに作りすぎてメリハリがない」と言われたことがあります。社内のデザイナーには、メリハリを付けるのが上手なタイプや、情緒的なデザインが得意なタイプがいます。その人たちを見ていると、個性的で自分の色を持っている人や、面白味のある人に憧れる気持ちもあります。

ただ、反対に柔軟性を褒められることも多いので、ハッキリした個性がないことは強みでもあると捉えています。
自分を色に喩えると、赤でも青でも黒でもなく、何色にでも染まることができる、無色透明。声をかけてもらえたことに挑戦してみる姿勢を評価してもらっています。
思い返してみれば、ビタミンiファクトリーのプロジェクトで、ディレクターに挑戦したことも、面白そうだと思ったから。入社する際にTwitterでの採用にチャレンジしてみたことや、大学を辞めたことも、柔軟性がなかったらできなかったことだと思います。

――メールやSlackでのコミュニケーションも柔らかくて温かみがあるように感じます。やり取りで心掛けていることは?

とても心がけていることなので、伝わっていて正直うれしいです。
言葉を変換することを一番意識していて、「◯◯してください」ではなく「◯◯してもらえると助かります」とか、相手が受け取ったときのことを想像しながら文章をつくります。
また、「駄目」や「できない」といったネガティブワードは言わないようにしています。これは前職で塾の運営の手伝いで受付を担当もしていたことがあり、受験シーズンで繊細になっている受験生や保護者と接した経験が影響しています。どんな人にどんな言葉を伝えるのが適しているのか、考える癖が身についているように思います。

社内で新卒のマネジメントを行う際にも、自分がしてほしかったことや、やってもらって嬉しかったことを思い出し、それらを踏まえて色々と試行錯誤しています。
教育の現場では、子どもの頃の体験や記憶を重要視されていて、幼いうちに良い考え方を根付かせるために、接する大人が良い手本であろうとします。これは、社内のマネジメントにも応用できるのではと思います。まっさらな時期の出来事が、その後の社会人人生に影響を与えると思うと、上司や先輩は責任重大ですよね。

――小野さんが一緒に働きたいと思うのはどんな人ですか?

変な人と働きたいですね(笑)。個性が強く、はっきり自分の色を持っている人は、自分と対極で面白いと感じるので。相手の出してくれた突飛なアイデアを自分が実現に向けて動かす。そういう流れがあると一緒に働いていてバランスが取りやすいんじゃないかって思いますね。それに、会社自体もよりカラフルになって面白くなるんじゃないかと思います。

デザインと好きなものを掛け合わせ、新たな領域にも踏み出したい

――今後、どのようなことにチャレンジしていきたいですか?

クライアントと密にコミュニケーションを取る機会の多い、要件整理や構成作成など、プロジェクトの上流工程に参加していきたいです。
マネジメントに関しても、新卒だけでなくて同世代や年長者に対しても気軽にナレッジ共有できるような場作りをしたいと思っています。

もっと先のことを考えると、前職と今とで関わってきた教育とデザインに加えて、幼い頃から好きだった自然にも関わってみたいです。これまでに得た知識や経験を掛け合わせて、教育×デザイン×自然で何かできるといいなと思います。
これらはどれも娯楽ではなく生きる上で必要不可欠なものだと思っています。教育は、体と心を育み、より平和な社会を実現するために必要です。デザインは人のために思考し、最適な形として表現すること、 つまりは誰かの課題を解決することなので、人々のより良い暮らしのために必要です。自然を守ることはイコール人間を守ることで、生きていく上でもちろん必要ですし何より美しい。
この3つを、全部じゃなくても掛け合わせて仕事をし、貢献できるのが理想です。

写真:西田優太

contact

プラスディーへのご相談など、
お気軽にご連絡ください。

view details