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Culture

デザインエージェンシーが取り組む、組織デザインとは?

2022.3.23

2021年5月、プラスディーは、ビジョン、ミッションを刷新し、新たにパーパスを策定しました。
会社の在り方として『デザインエージェンシー』を掲げ、表層的な見た目のデザインのみならず、戦略・戦術などの全体設計についてもデザインの対象であると考え、更なる成長を図っています。
今回は、ビジョンとミッションの刷新に至った経緯、さらには社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる「組織のデザイン」をどのように行っているのか、弊社代表の白井と、組織面で様々なアドバイスをいただいている、元リンクアンドモチベーションの野村さんにお聞きしました。

profile
組織アドバイザー 野村 晃裕

2006年ワイキューブ入社。組織人事コンサルティング事業、ブランディングコンサルティング事業など新規事業立ち上げを行った後、2011年にリンクアンドモチベーションに入社。中小ベンチャー向け組織人事コンサルティング事業、ベンチャーインキュベーション事業、組織改善クラウド「モチベーションクラウド」事業に従事し、2020年Free Standard設立に参画。
スタートアップベンチャーの取締役を務める傍ら、経験豊富な組織コンサルタントとしての経験を基に、プラスディーの組織デザインの相談にも乗っていただいている。

代表取締役社長 白井 淳

ソニー・ミュージックエンタテインメントにて、セールス&マーケティングに携わった後、リクルートエージェント(現リクルート)にて、HR領域におけるIT / Web業界に特化したコンサルティング業務に従事。2008年に「今後、更に加速していく“デジタル領域”で企業の成長に寄与できる会社を」という想いから、プラスディーを設立。経営視点に立ち、企業の広告宣伝領域におけるKPI / KGIの設計や予算立案、部署の組織設計なども行う。

パーパス「デザインの領土を開拓する」を実現する組織づくり

――まずは、「プラスディーが目指すべき組織の姿」を教えていただけますか?

白井:個々が会社の存在意義(パーパス)に共感しながら、果たすべき役割・ミッションを遂行していくことで、会社組織の発展と個々の成長が実現できている組織。そして、そのサイクルが連続性をもちながら、掲げるビジョンへ向かっている状態。それが、目指すべき組織の姿だと考えています。

より社員が自分らしく生き生きと働けるようになることで、結果的に会社としてのアウトプット・クオリティも高まり、ビジョンである、「"デザイン"が生み出す価値で世界をよりよくする」に近づけると考えています。そのため、野村さんに目指す組織に向けた施策の設計、実施、運営についてアドバイスをいただいています。
野村さんや人事責任者に、約6ヶ月をかけて社員に対する私の思いやプラスディーの未来、会社として実現したい世界を共有しました。並行して、この思いを一緒に実現する社員一人ひとりの心身の状態や、タスクの状況を把握するため、約2ヶ月をかけて、社員とコミュニケーションをとりながら、新たな時代の変化に対応できる組織のあり方を複合的に考え、プラスディーの在り方を『デザインエージェンシー』とすることを決めました。

これまでプラスディーは『クリエイティブエージェンシー』としてクライアントの欲しているWebサイトや広告、動画などのクリエイティブ、いわゆる、“モノ”を提供していました。それに対し『デザインエージェンシー』はモノに限らず、思考や手法も提供することで、より最適/最良な手段を提供できるようにしています。

具体的な事業領域としては、デジタルクリエイティブの企画制作や運用・効果検証を行う『クリエイティブエージェンシー』と前段の戦略・戦術フェーズも包括したもの、これがプラスディーの在り方『デザインエージェンシー』だと考えています。

そう定義し直すことによって、社内外への影響や価値が変わってくると考えています。
社外に対しては、事業領域を広げたことにより、提供できる手法や手段が広がり、課題を発見するところから並走し、潜在/顕在課題に対して根本解決に向けた取り組みができます。
一方、社内では、「デザイン」という言葉のもつ機能を正しく理解することで、メンバーの思考・意識に変化をもたらします。そのためにも、クリエイティブ領域だけにとどまらない、戦略・戦術も含めたデザインフロー(事業領域)の再設計を行いました。

また、役務形態にも変化があります。クライアントとプロジェクト単位でお付き合いをするだけでなく、先方のオフィスにチームで常駐し、パートナーとして物理的に近い距離でサポートを行う編成をしています。早い段階で情報をキャッチアップし、課題を抽出することで、よりクライアントと並走できる環境をつくっています。

上記のような変化を、今後も更に加速していくために、インナーブランディングのプロジェクトもスタートしています。「再度束ねる」という意味を持つ言葉、“リバンドル”という言葉を採用して、『リバンドルプロジェクト*』と総称し、この1年弱で10件ほどの施策をスタートさせました。プロジェクトとして名前を付けることで、変革に取り組んでいることを一人ひとりが意識し、自覚的に変わろうとする意識を持ってくれればと期待しています。

*インナーブランディングである『リバンドルプロジェクト』。それに対して、『アンバンドルプロジェクト』(アウターブランディング)も同時並行で行っています。

――具体的な施策を少し紹介してもらえますか?

白井:例えば、「X Designer」の取り組みです。
プラスディーでは、“人や企業の営みのすべてが、デザインの対象であり得る”という考えから、2021年9月より、社員全員が「X Designer」として自身の肩書を定義しました。全員がデザイナーを名乗ることで、会社として行われるすべての課題解決に、デザインによる付加価値を加える。それを社内外に周知するための取り組みです。すべての課題解決とは、狭義のデザインであるビジュアル制作だけでなく、課題そのものの発見から解決に至るまでの戦略・戦術の立案、プロセス設計、具体施策の企画、実施など、文字通り「すべて」です。

他には、7年前まで行っていた社内コンテスト「PLUS DESIGN AWARD」を再設計して復活させました。このコンテストでは、会社が掲げるビジョン / ミッション / バリュー / パーパスを軸に、様々なテーマで社員がプレゼンテーションを行います。特にビジョン(“デザイン”が生み出す価値で“世界をよりよくする)への理解浸透促進を行うことを目的としています。
審査基準として、デザインを活用してどれだけ対象を「良化」できたか(ビジョン)、デザインを活用してどれだけ「新しい取組」ができたか(パーパス)といった項目を設け、自分たちのデザイン(仕事)の生み出した価値がビジョンに紐づいているか、改めて思考できる機会にしました。また、ビジョン / ミッション / バリュー / パーパスを体現した社員を賞賛する場でもあります。

「共通の目的」が組織の進むべき道を明確にする

――野村さんから見た、現在のプラスディーの課題を教えてください。

野村:課題だと感じていることは2つです。
1つ目は、プラスディーは若い組織なので、社員の個人感情、個人合理が出てしまうシーンが多そうだと感じました。
私は、ビジネスパーソンとしての成熟度には3段階あると思っています。
1段階目が個人感情。合理性は別として、「やりたいかやりたくないか」や「納得いくかいかないか」など感情感覚中心に動く状態です。2段階目が個人合理。「自分が評価されるかされないか」のような個人の損得に基づいて動く状態です。3段階目が組織合理。個人として短期的には損、あるいは面倒であっても、全体の成果のために時にはひと肌脱げる、という行動がとれる状態です。
プラスディーは若い組織だからこそ、「こんなに忙しい中、評価基準に入っていない追加施策に時間はさけないよ」など、緊急度は低いが会社にとって重要な施策のスピードが少しずつ遅れていく、というような事が起こりそうだなと。

2つ目は、「己のキャリアをつくっていくのは己である」というような、いい意味で自立している人が多いからこそ、互いの人生やキャリアについて、深く思考や対話をする時間が少ないのではないかと思っています。相互に影響を与えるというよりは、個々の戦いになっていそうな印象です。
なぜこれが課題かというと、私がこれまで様々な組織を見てきた中で、良いパフォーマンスを発揮できる組織は「One for All,All for One」を実行できていたからです。

「One for All」

各自が、個人感情ではなく、個人合理でもなく、組織合理で動ける状態。
各自、各部署が『自分の成果、評価』<『全体の成果』 『自部署の成果、評価』<『全社の成果』で動ける状態。

「All for One」

会社が、個々人の人生、キャリアの充実に向けて本気で貢献しようとしている状態。
仲間同士で、互いの失敗や未成熟を補おうと、相互に影響を与え続けている状態。

プラスディーの課題として挙げた2点は、いわば「One for One」的な思考なので、組織全体としてのパフォーマンスを高める上では、改善できるとよい部分だと思います。

課題の対策としては、組織合理で動ける状態に向けた第一歩、「共通の目的」を掲げ、共感を集めることが大切です。「共通の目的」=ビジョンやミッションです。
全体で共感を集める上では、マネージャーと新入社員の存在が大きく影響します。マネージャー自身が、組織における影響力を自覚し、どう行動し、何を発信すべきか、思考を深めていかなければなりませんし、採用シーンでもミッション / バリューの発信を強め、「共通の目的」への熱量が高い社員を採用していく必要があります。

――野村さんが過去にご担当されたお客様(企業)の事例をお伺いできますか?

野村:はい。過去担当した中でプラスディーと近しい業種業界のクライアントがいました。今では業界内でも一目を置かれるまでに成長されている企業ですが、私が関わり始めた当時の状況を一言で言うと、“しらけた組織”でした。トップが会社のビジョンや戦略をどれだけ語っても、社員は「また言ってるよ」と無関心。当然、戦略実行度は下がり、業績は停滞していました。

そんな状態の組織でも変われた理由は、1つ目に「共通の目的」をトップが伝え続けたこと。言葉にすると簡単ですが、トップはよく語り続けてくれたなと尊敬しています。しばらくは、話しても話してもしらけている状態が続き、発信している裏では、ひやかすようなSlackまであったそうです。それでも、伝え方を少しずつ変えながら、語っていた未来を少しずつ現実にしていきながら、語り続けたことで、少しずつ組織に浸透していきました。“しらけた組織”は、トップが何を発信しても最初は信じてもらえないのですが、諦めずに繰り返し語ることで、「社長は本当にそのビジョンを実現したいんだな」と皆さんの受け取り方が変わっていくんですよね。

2つ目は、新しい幹部の抜擢、交代です。これは解決策というより、結果的に、という面が大きいのですが、当時の幹部陣はほぼ退職し、新たな幹部に入れ替わりました。当時は、技量は高いがマネジメントはしたくない、というマネージャーも大勢いました。これは典型的な個人感情型のマネージャーです。「共通の目的」への熱量や組織合理で動けるマネージャーに入れ替わっていったことも組織が変われた大きな要因の一つでした。

3つ目は、先ほどもお話しましたが、採用の変化です。必要な業務スキルの穴埋め採用から「共通の目的」への共感者を採用するように変化させていきました。

誰からでも組織は変えていける

――野村さんから見たプラスディーの強みはなんだと思われますか?

野村:社員の皆さんが総じて会社のことが好きで、変に斜に構えている人が少ないところだと思います。
あくまで印象論ですが、「会社を良くするために必要な変化なら、やっていこうよ」というポジティブな考え方を自然とできている人が多いと感じます。これは、当たり前のようで、なかなかないことです。今までいい採用、いいコミュニケーションをしてきたのでしょう。
あとは、マネージャー陣の心が強いですね。皆さん非常に忙しそうですが、それでも基本的には言い訳を一切せず、会社の未来に向けた動きをとろうとする。プロフェッショナル型の組織は、宿命的にマネジメント陣に仕事が集中するので、恐らく忙しい状況は今後も変わらないだろうと思います。それでも会社の未来や自分の能力を磨き上げることに真摯に向かえる人たちがマネージャーを務めています。こういう人材がいることはエクセレントカンパニーになるための必須条件なので、とても素晴らしい。誇れることだと思います。

もう一つ、面白いと思ったのは、施策の進み具合です。前提として、組織づくりの施策は進まないことがほとんどです。売上をつくる業務と比べて、得られる結果がイメージしにくいからです。例えば、「バリューに向けてコミュニケーションを強めると利益が1万円高まる」ことなどが証明されればドライブしやすいのですが、組織施策は効果を感じられるまでに時間がかかることもあり、後回しにされた結果なかなか進まないものなのです。
これを進めていくのは担当者の胆力しかないのですが、プラスディーの人事担当やマネージャー陣は、忙しい中でも「なんとかするよ」という協力姿勢があり、施策が進んでいる。これがすごく大切なことなんですよね。
また、持ち上げるわけではないですが、白井さんの影響もとても大きいと思います。デザインエージェンシーとして経営すること、それを今の仲間と必ず進めることを強く決めているのが、外部の私にも伝わってきます。

組織のカルチャーは、「何をやっていくか」も重要なのですが、「何を見逃しているか」が大きく反映されます。「やると決めたんだから、最後までやろうよ」と、きちんと表に出して伝え、白井さん自身が先陣を切って進めているのが組織施策に限らず、物事を進めていくうえでも重要だと思いますし、プラスディーの強みだと感じます。

――マネジメント陣だけではなく、新卒や若手が組織に変化をもたらす起点となることはできますか?

野村:大いにあります。若手の言動は、思っている以上に影響力は大きいです。具体的には『意思ある相談』と『やりすぎる』ことをおすすめします。

例えば、デザインエージェンシーの社員のあり方や身につけるべき力などは、正解があるというよりは、皆で考え、作っていくものだと思います。そういったテーマについて、「プラスディーがデザインエージェンシーとして発展してく上で、私はこう力をつけていこうと思っていますが、どう思いますか?」と自分の意見を持った上で相談してみる。

「デザインエージェンシーを掲げているプラスディーだからこそ、今回のコンペはこんな案を提出してみませんか」と、自分なりの仮説を含んだ提案を上司にできたら大したものです。相談する方もされた方も、言語化する中で思考が深まっていきます。上司との1on1で話してみてもいいのではないでしょうか。

『やりすぎる』というのは大ケガはしないように気をつけてもらいたいのですが(笑)、「お客様にこう言っちゃいました。ちょっと僕、全力で頑張るので手伝ってください!」みたいな、ちょっとやり過ぎなぐらい、一歩踏み込む行動をとってみることです。勇み足が許される若手だからこそ、勇気は必要ですが、トライしがいのある項目なのではないかと思います。

逆に、気をつけるべきはやや攻撃的な質問でしょうか。例えば「うちってデザインエージェンシーの姿があまり明確ではないですよね」のように、それってただの批判だよね、と聞こえてしまう質問は、一瞬で周囲をしらけさせてしまうので、若手の皆さんは気をつけましょう。

組織と個人の「存在意義」をデザインする

――何かをつくるという点で組織づくりもある意味デザインに例えられると思うのですが、2つに共通するポイントはありますか?

野村:「分断されやすい」というところが似ていますね。デザインも「形だけつくってほしい」みたいに言われることがあると思います。でも本当はアウトプットだけではなく、経営方針があり、ビジョンがあり、それを戦略にし、という流れの中でデザインが存在するのではないでしょうか。
組織も全く同じで、「いったん研修しよう」とか、「とりあえずサーベイとってみよう」など、枝葉の部分が分かりやすいアウトプットになることが多く、事業と組織がうまくリンクせず、意味がない状態が続いてしまう。ここは、デザインと組織の共通するポイントだと思います。

――リバンドルプロジェクトの目指すところは?

白井:会社やマネジメント陣から期待される結果を出し、成果を生む。そして更によい結果を出し、成果を生むためにも、個々がそれぞれで頑張るだけではなく、社員同士で協力する。全員がこれまでのルールや仕組みにも「改善の余地は?」という疑いを持ち、工夫しながら変化をもたらしていく。その推進を会社やマネジメント陣は奨励し、積極的に協力する。こうすることで社員は、会社やマネジメント陣からの期待されることへのズレのない形で良い結果を出し、成果を生むことができていく。このサイクルが会社全体で起きている状態、それが目指す姿です。

また、プラスディーにしかない環境と、仕事をつくっていくことも重要です。
どれだけ『デザインエージェンシー』と謳っても、他に魅力的な企業があれば、これだけ流動的な世の中なため、外に出て行くという選択肢も多くあると考えています。
その中で、プラスディーにいる意味や意義を社員が見出せるよう、できる限りのことはしていくつもりです。そのためには、プラスディーのこれまでの風土、「好奇心旺盛で友好的。柔軟性と責任感がある」を土台として、社員一人一人の主体性が発揮できる新たなカルチャーをつくり出し、制度などのハード面も整えていく必要があると考えています。

「リバンドルプロジェクト」というネーミングは変わるかもしれませんが、"デザイン"が生み出す価値で世界をよりよくするため、まずは自分たちの組織からデザインしていきます。

写真:西田優太

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