【ソニーグループ様】社内技術情報を軸に、グループシナジーを生む。イントラサイトのアドバイザリー
プラスディーが携わっているプロジェクトのひとつに、ソニーグループのイントラサイト「Sony's Technology Search」のアドバイザリー業務がある。
Webサイト全体のアドバイスの他、掲載するムービーコンテンツの編集やプロデュースを担当しているのはクリエイティブディレクターの山木。ソニーグループ㈱ コーポレートテクノロジー戦略部門(CTSD)所属の山下様と平賀様(以下敬称略)に、本プロジェクト発足の経緯、コンテンツ制作の内容や、今後の取り組みへの展望を聞いた。
サイトを通して、技術と人を繋ぐ
山木とソニーグループとの関係は2018年に遡る。
ソニーグループ全体のテクノロジーに関するWebサイト制作で平賀様とプロジェクトを担当していたことをきっかけに、イントラサイト「Sony's Technology Search」(以下、STS)のメディアグロースのためにアドバイザリーとして関わることになった。
STSは、世界各地で働くソニーの社員に向けて社内外の技術情報を伝えるWebサイト。特にこれまで点在していた社内技術情報を整理し、調べやすい状態にすることが目的である。技術を軸に社員を繋ぐ役割を担っている。まずはサイト立ち上げの際に定例を設け、その中で課題や相談内容をひとつひとつ整理していった。
先方の要望は3つ。
1つめは、ただ情報を検索させるだけではなく、その技術をソニー内で共有、シェアすることで、社員同士の事業活用や事業部を跨いだ連携を促すサイトにしたいということ。
2つめは、専門的な技術を分かりやすく紹介しつつ、技術者の顔や人柄も同時に伝える方法として、動画コンテンツを制作したいということ。
3つめは、今後継続的にコンテンツを増やしていくにあたり、コストと管理工数を圧縮するため、最小限のリソースでコンテンツ制作を賄えるようにしたいこと。
あらゆる角度から課題解決の方法を見出す
当初、STSは技術情報の検索を主軸に据えていた。そこから、検索だけではなく、ソニーグループ内の「Sony Technology Exchange Fair」(以下STEF)の情報も取り扱うこととなった。
STEFは、ソニーの技術者たちが日頃研究している内容を社内に向けて情報発信し、社員同士で意見を交わし新たな価値創造を目指す技術交換会。1973年から続くこのイベントは、例年100以上の技術テーマが発表され、1万人を超える社員が世界各地より集まる。社内行事の中でも一際大きなイベントである。技術者だけではなく様々な事業に関わるソニーの社員それぞれの連携を支えている。
STEFの映像コンテンツを取り扱っていく上で、山木が着目したのは動画制作の手順。
CTSDに、ソニーのカメラを3台用意してもらうことを依頼した。その上で、撮影に同行しインタビューを撮影する際の構図や光の加減を山木が検討し、三脚で定位置に立てた3台のカメラで撮影を行う方法をとった。この撮影方法であれば、比較的簡単に準備を済ませることができ、ソニー内の取材メンバーへの知見も溜まっていく。
撮影時の手順を整理することで、仮に山木がいなくても同様のクオリティで撮影が行える。また、当日直接撮影データの受け渡しに入ることで、編集作業へもスムーズに入れるようにした。
技術者の受賞インタビュー等、STEFに出展する社員が登場するコンテンツの制作では、受賞者の視座を伝える質問案を追加するなどインタビュープロットへのアドバイスもしている。コンテンツの内容は専門的な技術がメインのため、知見がないユーザーにも分かりやすく伝えることが前提だ。そして、外部のメンバーとしてフラットな意見を出しコンテンツをよりよくするよう進めてきた。
最近の事例としては、STEFアワードの受賞者ムービー制作がある。山木が、前年度とは違う構成を提案し実際に採用された。ゴールド/シルバー/ブロンズの受賞チームそれぞれにインタビューをしていた前年度の内容から、STEFの大きな目的である社員の連携をテーマに、受賞者同士を一堂に集め、受賞者から受賞者へ質問をする相互的なコミュニケーションを見せていくことにしたのだ。制作側の観点としても一挙に複数のチームに取材ができるためスケジュールが短縮できるメリットも兼ねている。
柔軟性を持って、コンテンツの垣根無く相談できることが魅力
ここからは平賀様、山下様に実際にお話を伺いながらプロジェクトを振り返る。
――プラスディーに映像を含めたWebサイトのアドバイザリー契約を依頼することになった経緯を教えてください。
平賀:イントラサイトのコンテンツとして動画を使いたい想いはありましたが、知識や経験がありませんでした。以前プロジェクトをご一緒していた経緯から、Webサイトや動画制作への経験値が高いプラスディーへ依頼しました。映像制作会社に頼む場合のコスト面での懸念も含め、建付け部分からご相談しましたね。社内コンテンツとして、魅力的な動画を作りたいというこちらの意図を組んで、現場でベストな課題解決の方法を提案してくれています。
山下:STEFのような大規模で社員同士の交流もできる場がせっかくあるので、イベントの期間だけで終わらせるのではなく、コンテンツとして長く残していきたいと考えたのが始まりでした。技術メインで難しい話も多いため、目と耳で伝えられる動画にしたほうが伝わりやすいと思ったんです。
――プラスディーが提供している価値は何ですか?
山下:柔軟性でしょうか。社内向けのコンテンツといえども、なかなか興味を持ってもらうのは難しくて。忙しい社員にも見てもらえるコンテンツ作りのノウハウが必要になってきます。山木さんにはこちらからの質問に答えていただくだけではなく、具体的な指示や積極的な提案まで幅広く協力をいただいています。フレキシブルに動いていただき、コンテンツの垣根なく相談できることが魅力です。
サイトのUIについても、一般的な内容から最新のトレンドまで豊富な知識をもとにアドバイスを貰っています。正解が何通りもある中で、私たちの目指している「ソニーの技術を社内の人たちに伝えたい」という根本のテーマに寄り添った提案をいただいていますね。
平賀:プロの目線でWebと動画全方向に対して支援していただけることです。通常のプロセスですと、やることが決まってから相談に入りますが、何をするのか?どうしたらいいのか?という根本的な部分から話せることは価値だと思います。
山木:デジタル畑のクリエイティブディレクターとして、Webだけではなく映像も含めたアドバイスやディレクションで、課題解決のための力添えができればと思っています。
――課題を感じている部分はありますか?
山下:社員への興味の引き方です。動画の長さは1分がいいのか、3分がいいのか。コンテンツ毎にベストな尺があると思います。また、タイトルの付け方ひとつでファーストインプレッションが変わるので、その点もまだまだ工夫していけると考えています。
平賀:サイトの回遊性の向上です。STSの立ち上げ当初も山木さんにかなり具体的に提案をいただきました。社内のコンテンツのため、広告などに頼らず、いかにリピートしてもらうかを考える必要があります。1ユーザー当たりの滞在時間を伸ばすためのデザイン改修も今後検討しています。
山木:その他で言うと、ソニーの文化を継承していくために、定年間近のベテラン社員と若手の対談というオリジナルコンテンツの7回連載をしたときは、元となる文章もなかったのでコンテンツのライティングも担当させていただきました。私の文章力も磨いていかないといけないのは課題かもしれません(笑)。今後も継続的に、課題解決に対しての提案やアドバイスをしてコンテンツ全体のクオリティ向上を一緒に進めていきたいです。
クライアントに伴走し、課題を解決し続ける
今回のプロジェクトでは、規模感や予算感などを理解したうえでクライアントが求めている最適な答えをアウトプットに囚われず、柔軟に提案し続けている。
これは、私たちが提唱している「& DESIGN FLOW 」に基づくものだ。
「どんな些細な疑問や質問でもまずは、相談してほしいです。何を解決すべきなのか? 課題は何なのか? 実行・検証後の新しい課題(NEXT WHY)や、さらにその解決方法を一緒に考えることができます」と山木は語る。
世の中の多くの人の目に触れるわけではない専門的な情報だからこそ、興味喚起ができる切り口や理解促進する見せ方が重要になる。その結果、サイトの回遊率向上に寄与し、当初の目的であった情報を通した社員同士の技術理解や研究への興味喚起につながっていく。
プロジェクトに伴走することでこれからも課題の発見と解決を繰り返し、価値提供を続けていく。
写真:西田優太