【オープンハウスグループ様】常識の変革に挑む、不動産のシームレスな購買体験デザイン
1997年から都心部を中心とした不動産事業で急成長をしてきたオープンハウスグループ(以下、OHG)。プラスディーは2020年からグループの一員に加わり、マーケティング、広報、情報システムなど幅広く支援している。
今回取り上げるプロジェクトは、自社で建設・販売する分譲マンションのオンライン販売サービス、「OPEN RESIDENCIAオンラインストア」(以下、「本サービス」)。
OHGとプラスディー両社のプロジェクトメンバーへのインタビューを交えて、グループにおけるDX推進の一旦に触れていく。
オープンハウスの新たなチャネル
OHGは、業界屈指の「強い営業力」が武器である。しかし、さらなる成長を遂げるために「強いデジタルの力」を持つことが必要だと自社の「デジタルトランスフォーメーション(DX)白書」にてメッセージングしている。
「不動産業界の前例にとらわれず、テクノロジーの積極的活用を図っていく」という意思を体現する本サービスは、OHGのマンションブランドである『OPEN RESIDENCIA』の購入体験を一新する。マンションの購入フローの大部分、具体的には物件閲覧から希望物件の申し込みまでがオンラインで完結するのだ。購入資金の簡易審査シミュレーションや、従来は店舗で渡していたハザードマップなどの資料もオンラインで入手可能である。
「意外なことに、申し込みの決済までが含まれているマンションのオンライン販売サイトというのはこれまでほとんど事例がないんです」と話してくれたのはOHG マーケティング本部 DX部 次長の橋本さん。少ない事例の中で競合分析からこのプロジェクトをスタートさせた。
競合分析自体は順調に進んでいったが、EC事業は社内で前例のない領域。障壁となったのは社内の法務関連の調整はさることながら、決済システムを伴うWEBサイトの構築だ。
「ECについても仕組みなどを調査しました。他社では、ソフトウェアやシステムをゼロからつくりあげる所謂、フルスクラッチで制作していたんです。しかし、スケジュール面、運用面、コスト面など全てにおいてハードルが高いと感じました」
システム会社、制作会社など数社検討を重ねたが、最終的にはSaaSを使ったECサイトの構築実績が豊富なプラスディーに依頼することに決まった。
「もちろん、グループ会社なので最初から依頼することは頭にありましたが、事業を推進していく上でしっかりと他社も検討した上での結論でした」
「同じ血が通っている」
実際にプラスディーとプロジェクトを進めるに当たってのメリットを尋ねると、返ってきた回答は大きく2点。
1つ目は不動産事業の理解の深さ。
OHGオフィスに常駐するプラスディー アカウントリレーション局は、日々の業務の中で不動産業界知識をキャッチアップするだけではなく、常に情報をアップデートするように努めている。
宅地建物取引士(宅建)の資格取得者が増えていることも要因だろう。
2つ目はスピード感。「インハウスということで物理的な距離感も近く、ツーカーで進められる面もありますし、元々、制作実績が豊富なので圧倒的にスピード感が違うと思いました。」とOHG マーケティング部の鎌田さんは答えてくれた。
「プラスディーはプラスディーとして独自のVisionを掲げていますが、それでもやはりグループとしての目標は共有できています。同じ血が通っていると感じます」
同 DX部 DXG HR戦略課の金惠さんからは「6月のサイト公開後もデザイン面の調整でデザイナーの白河さんとやりとりさせていただきましたが、的確なレスポンスで言うこと無しという感じです」とお褒めいただいた。
プロジェクトの本質
「テスラ、ユニクロ、ZOZOなど各界のリーディングカンパニーは、試乗や試着〜購入へとリアル〜オンラインをシームレスに行き来するビジネスモデルをつくり、日々進化させています。本サービスも、同様の思想から起案されており、不動産業界にとって大きなインパクトを与え得る仕事だと認識しています」と話すのはプラスディー アカウントリレーション局 局長の小畑。彼は、顧客の利便性を向上し、購買体験をアップデートさせることが大きなテーマだが、このプロジェクトは労働環境改善にも一役買っていると続けた。
「販売物件数と営業担当者数の均衡が常にとれているとも限りません。適正な労働時間で顧客満足度を上げていくという、販売者と購入者双方の効率化が本質的な取り組みだと思います」
効率が上がるとコストが削減でき、その分を顧客に還元できる。実際に、本サービスから物件の購入をすると最大50万円のオプションサービスがつくなど、顧客還元の取り組みが行われている。
一方で、初めて購入する方へのハードルの高さや、コミュニケーション設計などの課題は残る。
安全圏の外へ
他業種では、当たり前になっているオンラインストア。不動産業界で前例が少ないのにはいくつか理由があるが、恐らく「契約締結は書面が必須」であったことが大きいのではないだろうか。これまで不動産における重要事項説明・売買契約締結・媒介契約締結は書面での契約が必須となっていたのだ。
しかし、2022年5月に宅地建物取引業法が改正された。上記の電子交付が認められ、不動産にまつわる電子契約が全面解禁したのである。
「今後は売買契約及びローン契約までをオンライン完結で行える仕組みの構築を目指したい」と話してくれた鎌田さん。
さらに、現状はマンション販売のみだが、総合不動産企業としての強みを活かすべく、主力商品である戸建や、米国不動産のオンライン販売も展開を検討しているとのことだ。
既存の文化風習や慣習に従ったビジネスを安全圏内のビジネスと呼ぶとすれば、本サービスはその外へ飛び出す挑戦だ。プラスディーは、リスクをいとわないOHGの姿勢に強いシンパシーを感じている。
OHGとプラスディーは今後も、安全圏の外に出るようなDXを、グループシナジーを持って加速させていく。
写真:西田優太