プロジェクト

関わるステークホルダー全員が『total-win』の関係をつくるために。【TOHOシネマズアプリ編】

2021.7.23

# プロデューサー# アプリ# プロモーション

2021.7.23

TOHOシネマズで上映中の映画作品情報の確認やチケット購入もできるTOHOシネマズ公式アプリ。ARを使用した映画館連動型キャンペーンに広告枠の導入など、その制作に初期段階から携わったプロデューサーの湯原靖公にインタビューをする。プロデューサーとしてプラスディーの案件に携わる彼は、ANAの欧米豪インバウンドに特化した地方自治体向けの訪日外国人誘客事業を契機に社内の地方ブランディング案件の基礎を作り上げた。前編後編にわたってクライアントと制作会社双方が満足するクリエイティブを作るための関係構築の方法を聞いた。

PROFILE

湯原靖公 チーフプロデューサー
webデザインの制作会社に入社し、エンタメを中心とした音楽系アーティストのオフィシャルサイトや映像・イベントを絡めたプロモーションなど、幅広い分野にて制作ディレクションを経験。スピード感と様々なジャンルで制作に携わるプラスディーに魅力を感じ入社。入社後は世界6大マラソン大会の1つでもある東京マラソンの公式サイトや航空会社ANAが行う外国人観光客向けのブランディングサイト、企業のインナーイベントなどを担当。最近ではTOHOシネマズ公式アプリを主体に映画配給会社の各種プロモーション施策を行っている。

total-winを目指して設計した、TOHOシネマズ公式アプリの広告枠

――TOHOシネマズ公式アプリにはどのように関わった?

TOHOシネマズ公式アプリは、劇場のチケットや前売り券であるムビチケの購入ができるほか、アプリ内のデザインテーマを変更できる着せ替え機能や、毎月1回発行されるTOHOシネマズマガジンも読むことができるのでチケット購入だけに限らず楽しめる機能が満載のアプリです。
別のプロデューサーが立ち上げたものを引き継ぐ形で関わりはじめました。それが2016年11月なのでもう4年以上になりますね。一番初めに行ったのはバグの解消です。Android版のみを内製し、iOS版は外部パートナーに委託していたのですが、挙動の不具合や立ち上げができない状況が発生していて。半年で全てのバグを解消することを目標に取り組みました。金額やクオリティを加味したうえでベンダーの選定をし直し、今はクラッシュ率も1%を切る形となっています。

アプリの土台を整えるのと同時並行で「アプリを使ってできること」をずっと考えていました。アプリが問題なく動くのは最低限の話で、それ以上の提案をしなければ存在価値がありません。いろんな機能を追加してきましたが、特に喜んでいただけたのはアプリ内に掲載するプロモーションエリアの設置です。もうひとつはスマートフォンに標準装備されているAR機能を利用した、映画館に来場した人だけが楽しめる施策です。

チケット販促の効果も見込める、プロモーションエリア設置

――プロモーションエリア設置の具体的な内容は?

プロモーションエリアはアプリ内の広告枠の仕組みを是非作りたいと考えていました。アプリによくあるような何でもありの広告ではなく、TOHOシネマズで上映予定の話題作のプロモーションのみを扱う枠です。映画のアプリをインストールするくらい映画好きが集まっているアプリだと思うので、映画と全く関係ない広告を出すのはもったいないと思ったからです。

元々、チケット販売を目的としてつくられたアプリなので、最初に広告枠を付けましょうと提案したときは、あまり良い反応は得られませんでした。余計な広告を付けて、ユーザーが離れてしまってチケット販売数が落ち込むと本末転倒だと思うので当然の反応だと思います。そのため、いま売り出したい映画をプロモーションする形なら「広告収入が得られるだけでなく、チケットの販促にも結び付く」ことを伝える必要がありました。

とはいえ、前例がないため、企画書だけで提案してもなかなかイメージしにくいことも分かっていました。そこで、広告が表示されてからチケットを購入するまでのフローのイメージがしやすいようにモックを用意しました。当時の主力作品のキービジュアルも拝借して、リッチな広告ビジュアルも用意して。しっかり作り込んだのでそれなりに工数がかかりましたが、自主提案としてモック制作の予算はいただかずに制作をおこないました。モックを見てもらったことで、「これなら単なる広告ではなくチケットの販売にもつながる」と好感を持っていただけたと思います。

各配給会社さんにとっては、プロモーションエリア経由で購入されたチケット数が数字で分かるため、費用対効果が目に見えやすい点で出稿しやすいのではと思います。ディズニーさんや20世紀スタジオさん、東宝東和さんが特に興味を持ってくれました。
また、僕らには配給会社さんとの直接の伝手がないため、ムービーウォーカーさんとタッグを組み彼らにもフィーがいくように設計をしました。

ユーザーからしても、映画を観たいからアプリを立ち上げたのに、無関係な広告を見せられるとストレスですが、映画のトレーラーや、その世界観に沿ったクリエイティブの広告なら、むしろ楽しんで見ていただけます。クライアントからユーザーまで、ステークホルダーみんながメリットを得られるtotal-winの関係値を目指しています。

映画館の楽しみ方を広げ、来館動機をつくるAR機能

――もう1つのAR機能はどんな目的で取り入れた?

ARは、最近取り入れた機能です。こちらは映画館に足を運んでもらうきっかけの1つとして提案しました。販促ツールとしてのARの魅力は、位置情報が使えることです。「映画館に来ないと体験できない楽しみ」をつくることで来館動機をつくることができます。また、ARは素材が非常に重要で、魅力的なキャラクターが使えなければ施策として成り立ちづらいのですが、映画の場合はその点もクリアしやすいので相性が良いと考えました。
直近の施策ですとKADOKAWA映画の「妖怪大戦争 ガーディアンズ」でこの機能を活用しています。
TOHOシネマズの館内でアプリ内からARカメラを起動すると、映画に出てくる妖怪たちを見つけることができます。施策を提案した際、配給元のKADOKAWAの会長に気に入っていただけたこともあり施策用に各妖怪の動画素材を手配してもらえました。クーポンがもらえるスタンプラリー形式にするなど参加意欲を高める工夫も凝らしています。
実は元々、別の映画でAR機能を初披露する想定だったのですがコロナ禍による劇場休館の影響を大きく受け、施策が立ち消えになった経緯がありまして。それでも、機能自体は映画と相性が良いと思っていたので、状況が落ち着いたタイミングですぐ提案ができるよう機能実装は進めていました。その御蔭で、今回の施策には余裕を持って取り組めたと思います。

ありがたいことに、アプリのダウンロード数も年々上がってきています。アクセス数やチケットの販売数も定量数値として完全に出るため、数値が良かった場合だけではなく、厳しかった場合の対応は特に気を付けている部分です。「なぜこの結果になったのか」「解決策はどうしていくのか」など、これからを見据えた報告をしていくことがクライアントとの信頼関係構築に繋がっていると考えています。

後編へつづく

FEATURE TOP記事ページトップへ